文芸

『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎/新潮社/ISBN:9784104596034)

思い浮かべた事は3つ。 第一に、タイトルの由来でもあるであろうビートルズのアルバム『アビーロード』のこと。ビートルズの実質最終アルバムのラストを飾るメドレーの中でも「Golden Slumbers」は最後の盛り上がりを導き出すための曲。読んでる途中やっぱり…

『リリイの籠』(豊島ミホ/光文社/ISBN:9784334925864)

女の子同士って、むずかしいけれどやっぱり特別 (帯より) 女子高が舞台。そして「リリイ」。ゆえに「百合」な作品です。全7編いずれも女子と女子の恋愛あるいはその一歩手前の感情を描いております。女子と女子といっても先輩と後輩だったり、先生と生徒だ…

『クローバー』(島本理生/角川書店/ISBN:9784048738170)

双子の姉弟の恋愛模様。弟君の一人称です。動かしやすそうなキャラである姉君の恋愛模様は早めに片付くので注目は弟君の恋愛模様。過程も結末も突飛な話でなく、それよりも弟君の視点を通して彼女が変わっていくのを見守るのが楽しかったです。クローバー島…

『東京・地震・たんぽぽ』(豊島ミホ/集英社/ISBN:9784087753837)

東京で大地震発生。その前後の人間模様を描く短編集。これまでの作品とは描こうとしてるものが変わったのか、と思ったけど『青空チェリー』の頃に「ハニィ、空が灼けているよ」を描こうとしてたくらいなんだから、当然来るべき道だったのかも。音楽でみんな…

『紅無威おとめ組 かるわざ小蝶』(米村圭伍/幻冬舎/ISBN:9784344010574)

ひょんなことから出会った小蝶、桔梗、萩乃の三人娘が、知恵と色気と膂力を武器に巨悪に挑む「大江戸チャーリーズエンジェル」。ネオ時代小説。 出版社情報より 退屈姫シリーズより少し時代は後、松平定信の時代ですね。軽業師・小蝶、剣士・桔梗、発明家・…

『ぽろぽろドール』(豊島ミホ/幻冬舎/ISBN:9784344013414)

かすみの秘密は、頬をぴしりと打つと涙をこぼす等身大の男の子の人形。学校で嫌なことがあると、彼の頬を打つのだ(「ぽろぽろドール」)。人形に切ない思いを託す人々を綴る連作小説。 出版社情報より この方はパラノイア的なものを描くと筆が冴えるなぁ、…

『遠まわりする雛』(米澤穂信/角川書店/ISBN:9784048738118)

短編集。古典部シリーズを読むのは久々で、前作までの事をしっかり覚えているわけではないですが『クドリャフカの順番』での千反田えるの一人称パートが楽しすぎたことはよく覚えているので、彼女中心に読んでいく。やっぱり楽しいなぁと思いつつラストを飾…

『数学ガール』(結城浩/ソフトバンククリエイティブ/ISBN:9784797341379)

高校生の頃。数学の問題を解いていると幸せな少年でした。幸いなことに(?)好きなほどには得意でなかったもあり、難問に挑戦というよりはそんなに難しくなくても解けたことが嬉しいタイプで今でいう「ナンプレ」とかを解くのと同じ感覚だったかもしれませ…

『エバーグリーン』(豊島ミホ/双葉社/ISBN:9784575235555)

初々しい中学生の男女。シンはミュージシャンを目指し、アヤコは漫画家を目指し、それぞれ別の高校へ行く。10年後互いに成功してここで会おうと約束して。そして10年後、というお話。実際に会ったところでラストを迎えるわけですが、その会う直前の2人の心…

『神田川デイズ』(豊島ミホ/角川書店/ISBN:9784048737661)

『檸檬のころ』が地方を舞台にした大学受験までの話だとすると、こちらは大学に上京してからの苦悩と言うか何かをを描いた青春グラフィティ。連作短編集って大好きな形式なんだけど、「女の先輩に本気で憧れているような娘でいて座でその上左翼」な中野さん…

『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹/東京創元社/ISBN:4488023932)

「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そ…

『ボトルネック』(米澤穂信/新潮社/ISBN:4103014717)

読んだ。面白かった。こんなに完膚なきまでに容赦なく自分の存在意義を否定される話って記憶にないなぁ。しかもそれが案外さらりと描かれているところがすごい。主人公のこれからは大変だろうが、読者として得られる教訓は大きい。今の自分の仕事を他の人が…

『レインツリーの国』(有川浩/新潮社/ISBN:4103018712)

読んだ。面白かった。ライトノベルから始まる恋愛小説。基本的にはもどかしい。互いに想いあっているのに事あるごとに小衝突。感情のぶつけ合いで一歩前進という感じで一気には進行しません。そのもどかしさが良いです。『図書館内乱』はこれから読みます。

『初桜』(角川書店/水原佐保/ISBN:4048736930)

版元情報によると 「隣の教室から、カンニングすることは可能でしょうか?」──青年俳人のもとで、俳句を学ぶ高校生のさとみ。ふたりが解決していく、ささやかな日常の謎とは……。期待の新人が贈る、珠玉の青春ミステリ! という内容だそうです。えー、第一感…

『配達あかずきん』(大崎梢/東京創元社/ISBN:4488017266)

元書店員が描く本格書店ミステリ、らしい。5編収録。書店員が書くミステリで東京創元社で、という事前情報から期待する通りの作品でした。デビュー作なのでしょうが、とっても安定していて安心して読める作品。雑誌や本のタイトルが結構そのまま使われている…

『終末のフール』(伊坂幸太郎/集英社/ISBN:4087748030)

久々の伊坂作品。『チルドレン』以来かな。3年後に地球が滅びると言われる世界で描かれる様々な人間模様。いわゆる連作短編集。どの話も読みやすいというか、速攻で話に惹きつけられてしまい一気に読みました。細かく良い点を挙げることは私の能力を超えてい…

『クドリャフカの順番』(米澤穂信/角川書店/ISBN:4048736183)

楽しかった。版元情報によると(http://www.kadokawa.co.jp/hot-line.php?pcd=200501000087)内容は次の通り。 待望の文化祭。だが、折木奉太郎が所属する古典部では大問題が。手違いで文集を作りすぎてしまったのだ。古典部の知名度を上げて文集の完売を目…

『私が語りはじめた彼は』(三浦しをん/新潮社/ISBN:4104541036)

「本屋大賞」ノミネート作品のうち、こちらで3作品目。ネタバレあったらすみません。 面白かった。面白かったけど一気に読んだわけでなかったので、部分部分を頭の中で上手く調整できず少し苦しみました。苦しんだのは村川融の子供達の関係。えーと、ほたる…

『空の中』(有川浩/メディアワークス)

なるほど、面白い。ラスト前の暴走部分「第9章」のところをじっくり読めなかったのでもう一度読み直そうとは思う。こういう話を読むと『寄生獣』を思い出したしまう私はダメですか。 主人公が誰なのか分かりませんが、何人かの重要人物いて、その中では高巳…

『螢』(麻耶雄嵩/幻冬舎)

ネタバレってことを考えるとおそろしく感想が書きにくい作品ですね。らしいと言えばらしい作品で『夏と冬の奏鳴曲』と同じレベルで最初から一々確認してしまいました。やられた感となるほど感は半々ぐらい。で、ラスト1ページのエピローグに打ちのめされる。…

『夜のピクニック』(恩田陸/新潮社)

私の中では『木曜組曲』と『ネバーランド』が対で、その感じで行くと『黒と茶の幻想』と対になるような作品。 あるいは、 『光の帝国』の中でもラストの「国道を降りて...」がものすごく好き。表題作「光の帝国」の救いのなさの対比的に描かれているとはいえ…

『グラスホッパー』(伊坂幸太郎/角川書店)

少し前に読み終わりましたが上手くまとまりません。鈴木の亡き妻のような方、募集中。

『チルドレン』(伊坂幸太郎/講談社)

嬉しい。読んでいて嬉しくなる作品です。 内容説明は割愛。5つのお話のうち一番好きなのは「レトリーバー」。陣内・永瀬・優子+ベスという組み合わせは読んでいて本当に嬉しくなります。電車内でニコニコしながら読んでいて、周りから見るときっと変な人に…

『クレオパトラの夢』(恩田陸/双葉社)

『MAZE』の続編、らしい? 『MAZE』は読んだはずだけど忘れてるなー。登場人物達が追い求めている“クレオパトラ”の正体は何なのか?―という部分より、登場人物達の腹の探り合い、騙し合いの部分が楽しかったです。函館にも詳しくなるよ。年の瀬ネタというこ…

『さよなら妖精』(米澤穂信/東京創元社)

著者は、『氷菓』(角川書店)の人で、レーベルは『アヒルと鴨のコインロッカー』(伊坂幸太郎)から始まった注目の東京創元社ミステリ・フロンティアです。 本作の舞台は10年ほど前の日本ですが、大きく関係してくるのはユーゴスラヴィア。当時の情勢、地理…

『素晴らしい一日』(平安寿子/文藝春秋)

『グッドラックららばい』(講談社)が猛烈に面白かった平安寿子のデビュー作にあたる短編集ですね。この頃から奇妙なユーモア感は炸裂してます。「アドリブ・ナイト」なんかは結構重く展開していくのにオチは前向き。他のも徹頭徹尾軽いわけでなく、必ず重…

『黒の貴婦人』(西澤保彦/幻冬舎)

タック&タカチシリーズの短編集。「招かれざる死者」「黒の貴婦人」は既読。「スプリットイメージまたは避暑地の出来心」も大半読んでました。ということもあって一番印象的だったのは「夜空の向こう側」です。これは『依存』後で、さらに卒業後の話。タッ…

『レイン レイン・ボウ』(加納朋子/集英社)

一年のスタートは加納朋子から。加納朋子らしく、やわらかく、優しく、少し強い、とても“イイ”話でした。以下、ネタバレ含みます。 一応は『水曜日の水玉模様』の続編にあたる作品。知らなくても大丈夫です。部活仲間の1人が若くして死に、その死をキッカケ…

『アヒルと鴨のコインロッカー』(伊坂幸太郎/東京創元社)

こういう話はどういうジャンルに分類されるのか知りませんが、そういうのとは関係なく楽しませてもらいました。 現在のパートと二年前のパートが交互に進行。当然別の話なのですが両方に登場する人物がいるので、その二つの話がどうつながるのかが、きっと読…

『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎/新潮社)

直感的な感想で言うと、村上春樹的。といっても私は村上作品はあまり読んだ事がなくて、限定的に言うなら『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社)を思い出しました。なんでだろう?『オーデュボン〜』のキーワードの一つが“欠けているもの…