『さよなら妖精』(米澤穂信/東京創元社)

著者は、『氷菓』(角川書店)の人で、レーベルは『アヒルと鴨のコインロッカー』(伊坂幸太郎)から始まった注目の東京創元社ミステリ・フロンティアです。
本作の舞台は10年ほど前の日本ですが、大きく関係してくるのはユーゴスラヴィア。当時の情勢、地理・歴史的背景なんて全然知らないのに、わかったかのように読めて、しかも歴史の大きなうねりに打ちのめされる痛い系の話、という点で読後感が近いのは『プラハの春』(春江一也/集英社)。ミステリレーベルらしく、『氷菓』と同様に日常の謎的要素を上手く取り入れてますが、本作の読み所はミステリーとしてよりは、青春小説の側面にあると思います。『プラハ』ほどあからさまな恋愛描写は無いのに、人間関係・恋愛模様ではドキドキさせられます。特に大刀洗絡みの部分。今回一番損な役回りを押し付けられている彼女の幸せな姿も見てみたいなぁ。イメージとして無理っぽいけど。