『初桜』(角川書店/水原佐保/ISBN:4048736930)

版元情報によると

「隣の教室から、カンニングすることは可能でしょうか?」──青年俳人のもとで、俳句を学ぶ高校生のさとみ。ふたりが解決していく、ささやかな日常の謎とは……。期待の新人が贈る、珠玉の青春ミステリ!

という内容だそうです。えー、第一感想。北村薫。落語と俳句の違いはあれど。形式や構成が似ている面もあるのかもしれないけど、どちらかというと言葉を使って表現したいものがあるというこだわりのレベルで近いのかなぁと思った。俳句であるからこそ言葉の選択にかなり気を使っているであろうこと、俳句であるからこそ季節の感じ方にも気を使っているであろうこと、このあたりが文章から伝わってきます。俳句についての知識も増えた気がするし、俳句の本来の自由さも伝わってきて、これはいい感じです。
ミステリー的には「日常の謎」を「安楽椅子探偵」が解き明かすスタイル。謎は魅力的だけど、手がかりの提示がなんとももどかしい。もどかしいと感じるのが上手いからなのか下手だからなのかは私には判別できません。なんにせよ円紫師匠のシリーズが好きなような方は間違いなく楽しめそう。当然存在するであろう続編を楽しみに待ちます。