『夏期限定トロピカルパフェ事件』(米澤穂信/東京創元社/ISBN:4488451020)

全体として長編の構成。その一部である第一章の「シャルロットだけはぼくのもの」がとにかく好き好き大好きです。いわゆる「日常の謎」の範疇における小鳩君と小佐内さんの直接対決。ネタバレ的に言うなら、小鳩君が小佐内さんがちょっと席をはずした間に彼女のシャルロットというケーキをこっそり食べちゃう。ばれないように画策する犯人・小鳩君vsスイーツには人一倍うるさい探偵・小佐内、という倒叙形式のある意味微笑ましい対決です。たかがケーキ、なんだけど緊張度が高くて読んでいて心底楽しいというか奇妙な昂揚感も得られて本当に満足。このシャルロットは是非食べてみたいなぁ。
この後は後味の良くない事件に話は繋がっていきます。小鳩君と小佐内さんの関係が微妙なままでこの事件は終わるので、この先の『秋期限定』がわたし、気になります千反田える風)。
というのはさておき、「シャルロットだけはぼくのもの」で敗れた小鳩君の代償が、その後の彼の役回りなんだとしたら、その罪は極めて大きかったということなのでしょうね。食べ物の恨みは怖い。