『退屈姫君 恋に燃える』(米村圭伍/新潮社/ISBN:9784101265353)

退屈姫君 恋に燃える退屈姫君 恋に燃える
米村 圭伍

新潮社 2005-09
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またもや退屈で死にそうだっためだか姫。今回の一大事は、小文五の将棋の弟弟子・拓磨の身分違いの恋。一介の冷飯が大名の末娘に懸想してしまったのだ。「まあ、すてきすてき!」俄然、縁結びに燃える姫君。だが、ここにも田沼意次の魔手が…。家康より拝領の「水無瀬駒」を巡る藩命の掛かった知恵比べ。加えて貞操の危機も。めだか姫はいかにして立ち向かうのか。文庫書き下ろし。
版元情報http://www.shinchosha.co.jp/book/126535/より

私は「時代小説」と「ライトノベル」はとっても似ている、と思っています。各ジャンルの定義論を持ち出すと長くなるのでそのあたりは割愛します(古いし、まとまりもないですがこちらを参考に→http://d.hatena.ne.jp/domino/20041118#p1)が、このシリーズは両ジャンルを結びつける事ができるのでは、まぁ実際には「ライトノベル」読者に「時代小説」を読むきっかけとなりうる(逆は難しいか)のでは、と考えております。


この『退屈姫君』シリーズ、主人公はタイトル通り文字通り「姫」です。「姫」の特徴といえば「好奇心旺盛・退屈が嫌い」「傍若無人・猪突猛進で周りを巻き込んでの大騒動」「個人スペックは相当高し」と書くと、そう、まさに「ハルヒ」ではありませんか。本作『退屈姫君 恋に燃える』では上記のあらすじのように縁結びに燃えていたはずが、藩取り潰しすら引き起こしかねない大騒動に...という感じの本質コメディです。ライトノベルの文法に則って書かれている訳でもないし、イコール「ハルヒ」のノリで読むと肩透かしを食らうかもしれませんが、ライトノベルを読む素養がありつつこの世界に入っていけるならかなりの割合で楽しんでもらえるのでは、とオススメしたいシリーズなのです。


さて、「ライトノベル」と近いと言ってるのと合致するように本作はシリーズもの、です。ちょっとシリーズ背景を説明しますと、「姫」は大藩の姫君でしたが、四国の小藩に御輿入れ。その嫁ぎ先の小藩の冷飯たちの活躍を描いたのが第一作『風流冷飯伝』。当時は参勤交代という制度があり、交代で小藩に帰った殿の留守番として江戸で奮闘する「姫」を描くのが第二作『退屈姫君伝』。「姫」の無二の友人である「くの一」の数奇な運命を描くのが第三作『面影小町伝』。ここまでが三部作となっていまして、『面影小町伝』は他の二作品よりかなり後のお話となります。

この三部作のうち多分特に人気のあった『退屈姫君伝』が独立するかのような形で『退屈姫君 海を渡る』『退屈姫君 恋に燃える』は「文庫書き下ろし」にて発表される事になりました。「文庫書き下ろし」ってところも「ライトノベル」っぽいでしょ? この書き下ろし二作品は『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』の登場人物がわんさか出てくるので順に読むのが良いのでは。『面影小町伝』は時代が少しずれるので読まなくても支障はありませんが、唯一の(?)シリアスなノリなので、これはこれで楽しめると思いますのでやっぱりご一読を。弱冠下ネタが多いのはご愛嬌、ということで。

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米村 圭伍

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