『大正野球娘。〜土と埃にまみれます〜』(神楽坂淳/徳間書店/ISBN:9784198507534)

楽しかった。試合前々日から始まり、当然メインイベントは男子との試合で、後日談があって物語の終わりは「ハッピーエンド」という流れなんですが、試合前から試合が始まった直後くらいまでの地に足がつかず浮ついたような感覚が心地よくて、読んでるこちらまでふわふわした気持ちになってしまいました。作中の楽しさが伝わってきて、読んでるこちらまで楽しくなる、というのは本を読む喜びの中でも上位に来るんじゃないでしょうか。試合が始まってからはかなりマジ。息苦しいまでの緊張感も良いですねぇ。メリハリもあって上質なエンタメ作品だったと思います。

大正野球娘。―土と埃にまみれます (TOKUMA NOVELS Edge)大正野球娘。―土と埃にまみれます (TOKUMA NOVELS Edge)
神楽坂 淳

徳間書店 2008-08
売り上げランキング : 43463

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
余談。
個人的感想はさておき、売る側としてはどうか。女子スポ根モノとして私の中でタイプが近いのは『暴風ガールズファイト』。一緒に考えます。
本を並べる時って、まずは判型の影響を受けるので、普通は『大正野球娘。』はノベルス売り場に、『暴風ガールズファイト』は文庫・ラノベ売り場に並べることになるのでしょう。その中で出版社ごと等のルールで並ぶことになります。


一方、自分で読んでみて、どの層に受けそう、どの層に読んでもらいたいかと思ったかというと小学から中学くらいの女子なんですね。いずれ女子もBLかハーレクインかレディコミかそのあたりに流れていくのかもしれませんが、プリキュア等見て育った女子は元々女子たちで集まって何かを成し遂げるような話は嫌いじゃないと思うのですよ。「ハッピーエンド」な『大正野球娘。』はともかく打ち切られたっぽい『暴風ガールズファイト』はこのまま消えてしまうのは惜しい。そのまま使えるかどうかわからないけど、題材は向いていると思うんで何とかならないものか。ラノベから児童書・児童文庫という流れもこれまで皆無でなく『フォーチュン・クエスト』や『トリシア』シリーズなど事例もあるし。児童文庫は何故だかスポーツネタが少ないので厳しいかもしれないけどヤングアダルトならだめかなぁ。先日書いた『武士道シックスティーン』とかそちらのノリでもOKです。ラノベであるがゆえにラノベの範囲だけでしか売られないのはもったいないと思います。
フォーチュン・クエスト 1 (1) (ポプラポケット文庫 62-1)フォーチュン・クエスト 1 (1) (ポプラポケット文庫 62-1)
迎 夏生

ポプラ社 2007-10
売り上げランキング : 311329
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
トリシア、指名手配中!?―魔法世界ファンタジー (エンタティーン倶楽部)トリシア、指名手配中!?―魔法世界ファンタジー (エンタティーン倶楽部)
小笠原 智史

学習研究社 2008-02
売り上げランキング : 113290
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
金原瑞人監修の『12歳からの読書案内』は児童文庫アフターのヤングアダルト案内書。ラノベもたくさん案内されています。こういうのを見てもヤングアダルトラノベは読む側にとっては近しい存在なのに判型だったりレーベルの壁で一緒に売られることって少ないよねぇ、多分。それはもったいないことだと思います。読む側にとっても売る側にとっても。
12歳からの読書案内12歳からの読書案内
金原 瑞人

すばる舎 2005-12-19
売り上げランキング : 151673
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools